粘膜疾患

【1】口腔粘膜疾患について

口腔粘膜疾患について

口腔粘膜疾患とは、舌、唇、頬、歯肉、口蓋、口底などの粘膜が、腫れる、ただれる、水ぶくれになる、白色や赤色に変色する、ヒリヒリする、痛むなど、さまざまな症状を発症する疾患です。口腔粘膜は歯や食べ物(固い物や刺激物)や飲み物(熱い物やアルコール)など、機械的、化学的、温度的刺激を常時受けやすく、またさまざまな細菌やウイルスが存在していることから感染を引き起こしやすいという過酷な環境にあります。

例えば口内炎が口腔内にできたとしたら、それは何かしらの身体の異常を示すサインと言えます。口腔内は患者さま自身の目で確認できる唯一の臓器であり、セルフチェックでも比較的早期の段階で異常に気づくことができます。しかし、せっかくのサインを歯医者に通院しているのにも関わらず見逃してしまい、病状が進行してしまう例も少なくありません。その原因は、疾患を診る「目」が歯科医師に養われていないことにあります。数多くの粘膜疾患を診た経験のある歯科医師は、疾患の色、形態、表面性状、大きさなどから、「何か変だな」という違和感を持ちます。もう一つの原因は、一般の歯科医院には検査体制が十分に整っていない点です。

渋谷の歯医者「渋谷青山デンタルクリニック」には、長年にわたり口腔外科に従事してきた経験を生かした下記の①~④体制が整っています。また、検査もスピーディーに行うことができます。

  • ①お口の中の細菌検査
  • ②病変から採取された細胞を採取し観察する細胞診
  • ③疑わしい病変の一部を切り取って、菌や腫瘍の存在を詳しく調べて病気の診断を行う生検
  • ④血液検査までの検査体制

粘膜疾患の検査費用はこちら

明らかに悪性が疑わしい病変があった場合には、すぐに最寄りの大学病院、総合病院をご紹介いたします。

当院では、虫歯治療や歯の根っこの治療、ホワイトニングや審美歯科治療など、ご来院いただいたすべての患者さまの口腔内を責任を持ってチェックさせていただく義務があると考え、病変の早期発見に努めてまいります。

【2】当院の問診・診査・
診断・診断後の流れ

01

問診をご記入いただいた後、問題とされる粘膜疾患の診察(視診と触診)を行います。場合によっては、X線検査を実施することもあります。問題がない場合は経過観察または終診となり、痛みを伴う場合は対症療法を行います。明らかに悪性を疑う場合は、速やかに大学病院や総合病院をご紹介いたします。

02

異常がありそうな場合は、まず細菌検査や細胞診を行います。検査の結果、問題がなければ経過観察または終診となります。悪性の疑いが強い場合には、これまでの検査結果を持参していただき、速やかに大学病院や総合病院にご紹介いたします。

03

悪性の可能性も鑑みて確定診断が必要な場合には、さらに追加検査として生検や血液検査を行います。検査の結果、問題がなければ経過観察または終診となります。悪性の場合には、当院の検査結果を持参していただき大学病院や総合病院に速やかにご紹介いたします。紹介先でも、非常にスムーズに治療を受けていただけると思います。

【3】粘膜疾患の種類

【3-1】口腔粘膜全域に見られる粘膜疾患

慢性再発性アフタ
(chronic recurrent aphthae)

アフタは、1~2日で突然出現し、強い接触痛を伴いますが自発痛はあまりありません。2次感染で周囲の赤みが強くなり、リンパ節の腫大と圧痛が認められます。口腔粘膜疾患の中で最も頻繁に見られ、20~30代の女性に多く見られる反面、高齢者ではほとんど見られません。

小アフタは、一般的に径が5mmくらいの浅い小潰瘍を指し、個数は1~5個程度で、最も頻度が高く症状も軽い場合が多いです。再発性アフタの80%はこの型となります。10~14日程度で瘢痕(きずぐち)を残さず治癒します。

大アフタは、小アフタと外観は似ているものの潰瘍が深いのが特徴です。径が10~30mmと大きく1、2個のアフタが発生し激しい痛みを伴います。再発性アフタの10%で起こり、治癒に1ヶ月以上もかかり、しばしば瘢痕を残します。がんとの鑑別上、生検(組織検査)を行う場合があります。

原因 不明であるが、疲労、ストレス、感染症、女性の場合は性周期などがあげられています。
治療方法 ステロイド薬含有軟膏の患部塗布、炎症を抑えるうがい薬、レーザー治療。
がんの疑いが強い場合には大学病院、総合病院への紹介。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、細胞診、生検(組織検査)
口腔カンジダ症(candidiasis)

カンジダ症とは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)という真菌によって引き起こされる口腔感染症であり、免疫機能の低下した個体に発症します。発症部位は口腔粘膜のどの部位にも生じます。

口腔カンジダ症は、①偽膜性カンジダ症②紅斑性(萎縮性)カンジダ症③肥厚性カンジダ症 に分類されます。偽膜性カンジダ症は、急性型であり乳白色から灰白色の点状、線状、斑紋状の白苔が粘膜に付着しています。拭い取ることができ、その後は紅斑を残す特徴があります。ザラザラ感や味覚異常を訴えることが多いです。

紅斑型カンジダ症は、粘膜の萎縮により肉眼的に赤く見えるもので、舌では舌乳頭の萎縮が見られます。症状は灼熱感、接触痛、刺激痛、時に味覚症状を生じます。肥厚性カンジダ症は慢性型であり白苔が剥離しにくく上皮の肥厚を伴います。

原因 免疫力の低下、唾液の減少、長期間にわたる抗生物質の服用にて常在菌のバラスが崩れて真菌が異常増殖してしまうため(菌交代現象)。
治療方法 口腔内の清掃、抗真菌薬のうがい薬や塗り薬、内服薬の処方。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、細菌検査
口腔扁平苔癬(oral lichen planus)
  • 口腔扁平苔癬(oral lichen planus)
  • 口腔扁平苔癬(oral lichen planus)
  • 口腔扁平苔癬(oral lichen planus)

口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)は、口腔粘膜の角化異常を伴う慢性炎症性疾患で難治性の病変です。発生は0.1~4%の頻度でみられ、中高年の女性に多いのが特徴です。好発部位は頬粘膜で、舌、歯肉にもみられます。白い粘膜の角化が線状、網目状、レース状、環状の形の物があり、周囲に赤みを帯びるのが特徴です。慢性の経過を経て、多くは寛解、再発を繰り返しますが、びらんや潰瘍を伴うものは治療が困難な場合が多いです。

自覚症状としては、粘膜の荒れや接触痛、刺激痛があります。悪性化(がん化)の頻度は0.4~6%とされています。当院では、病態によりますが1~6ヶ月に1度来院していただき、下記の検査方法で安全にきちんと継続的な経過観察ができます。

原因 不明であるが、歯科金属アレルギー、C型肝炎ウイルス感染、内分泌異常、精神的ストレスの関与が言われています。
治療方法 歯科治療(歯科金属の除去)、ステロイド薬含有軟膏の患部塗布、炎症を抑えるうがい薬
がんの疑いが強い場合には大学病院、総合病院への紹介。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、細菌検査、細胞診、生検(組織検査)、血液検査
白板症(leukoplakia)
  • 白板症(leukoplakia)
  • 白板症(leukoplakia)
  • 白板症(leukoplakia)
  • 白板症(leukoplakia)
  • 白板症(leukoplakia)

白板症は、口腔粘膜に生じた摩擦によって除去できない白色の板状、あるいは斑状の角化性病変のことを言います。前癌病変(正常組織よりも癌を発生しやすい形態学的に変化した組織のこと)であり、がん化率は4.4~17.5%と報告されています。

均一型(平坦型、波型、しわ型など)と非均一型(疣贅型、結節型、潰瘍型、紅班混在型)に分けられ、不均一型の方が、がん化しやすい特徴があります。発生部位は、舌、頬粘膜、歯肉、口蓋、口腔底に多くみられ、50~70歳代に多く、男性に多い(女性の2倍)です。

原因 不明とされていますが、継続的な物理的、化学的刺激(タバコ、アルコール飲料、刺激性食品、歯に擦れる)やビタミンAやB複合体の欠乏、糖尿病、低アルブミン血症、高脂血症などがあげられます。
治療方法 軽度の場合は長期的な経過観察、中等度以上の上皮性異形成の場合は切除。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、細胞診、生検(組織検査)、血液検査
尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)

尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)

尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)は、皮膚および粘膜に大小の水疱を形成する自己免疫疾患(免疫系が自分自身の正常な細胞や組織に対して攻撃を加えてしまう疾患)です。

天疱瘡群で口腔粘膜に最も多く生じるのが尋常性天疱瘡(60~80%を占める)です。口腔内では頬粘膜・硬口蓋・歯肉・舌などの機械的刺激を受けやすい部位に発症します。表皮内水泡なので、弛緩性で破れやすく(水泡の壁が薄い)、やけどのような水ぶくれやびらん(ただれ)が生じて食事が取れなくなるほどの痛みを伴います。口腔粘膜の水泡形成はほぼ必発であり、皮膚病変に先行することが多いです。

原因 表皮または粘膜上皮の細胞どうしを接着するデスモグレイン(Dsg1.3)というタンパク質に対する自己抗体が作られます。そのため、皮膚や粘膜の細胞と細胞が接着することができなくなるため発症します。
治療方法 口腔内清掃、ステロイド薬内服あるいは含有軟膏の患部塗布、炎症を抑えるうがい薬。痛みが強い場合には、局所麻酔薬含有ゼリーの塗布。大学病院、総合病院への紹介。
検査方法 口腔内検査(視診、触診:ニコルスキー現象の有無)、生検(組織検査)、血液検査
ベーチェット病(Behcet disease)

ベーチェット病は、難治性の他臓器侵襲性の自己免疫疾患で、口腔内アフタ性潰瘍、陰部潰瘍、眼症状、皮膚症状の4つを主徴候とし、難病指定されています。舌、口唇、頬、歯肉などに2~3個のアフタが出現し、初発症状であることが多いです。

瘢痕を残さず治癒しますが、再発を繰り返します。20~30歳代に発病することが多く、小児や老年期には少ないです。性差は、やや男性に多い傾向があります。

原因 不明であるものの、組織適合性抗原のHLA-B51の陽性率が高いことから、遺伝的素因と細菌抗原の関与の可能性が考えられています。
治療方法 粘膜のアフタ性潰瘍に対してはステロイド薬含有軟膏の患部塗布、炎症を抑えるうがい薬。口腔清掃を行います。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、血液検査
帯状疱疹(herpes zoster)

帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、身体の左右どちらか一方にピリピリと刺すような痛み(神経痛様疼痛)と、これに続いて赤い斑点(丘疹)と小さな水ぶくれ(水疱)が帯状に出現する病気です。

発疹は通常、丘疹→小水疱→びらん(ただれ)→痂皮(かさぶた)→瘢痕(傷あと)の経過をたどり、発症から3~4週間で治癒します。多くは20歳以上の成人にみられ性差はありません。

口腔領域では、頭部にある三叉神経という太い神経節の支配領域に多くみられ、第1枝(眼神経)、第2枝(上顎神経)、第3枝(下顎神経)の順にかかる率が高く、片側に出現します。

帯状疱疹(外耳道から耳介周囲)、顔面神経麻痺、内耳症状(耳鳴り・難聴・めまい)の3主徴を示すものをラムゼーハント症候群といいます。

原因 水痘にかかった後、神経節に潜伏感染していた水痘、帯状疱疹ウイルス(VZV)が免疫機能低下によって再活性化されるためです。
治療方法 抗ウイルス薬(アシクロビル、ビダラビン、バラシクロビルなど)の内服および含有軟膏の患部塗布。症状発現の初期ほど有効です。
痛みには対症療法。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、細胞診、血液検査

【3-2】舌の粘膜疾患

黒毛舌(black hair tongue)

黒毛舌(black hair tongue)

舌背の糸状乳頭の角化が亢進すると、毛が生えたように見え、この状態を毛舌と言います。黒色ないし褐色の場合が黒毛舌です。カンジダ菌が増殖した結果として、硫黄化合物が生じ、これと血中ヘモグロビンが結びついて黒色になると考えられています。

原因 抗菌薬やステロイド薬の長期間服用にて口腔細菌叢に変化が起こるため(菌交代現象)。口腔清掃不良や喫煙も関与します。
治療方法 口腔内の清掃、抗菌薬の服用中止。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、細菌検査(当院で対応可)
地図状舌(geographic tongue)

地図状舌(geographic tongue)

舌の表面に白班と赤斑の模様が混在することで、地図のように見えることから地図状舌と言われています。主に舌背部にみられ、発現頻度は小児や若い女性に多く、成人では少ないです。

痛みや痒みなどの自覚症状はほとんどありませんが、食事の際に舌がヒリヒリする症状や違和感を覚えて気づくことがほとんどです。他の粘膜疾患との鑑別診断が必要なので検診を推奨します。

原因 地図状舌は現在、原因が明確には分かっていません。風邪やストレスや不規則な生活などで免疫力の低下により発症するとも言われています。
治療方法 口腔内の清掃、対症療法(炎症を抑える軟膏やうがい薬の処方)。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、他の粘膜疾患との鑑別(細胞診、細菌検査)、金属アレルギー検査
溝状舌(fissured tongue)
  • 溝状舌(fissured tongue)
  • 溝状舌(fissured tongue)
  • 溝状舌(fissured tongue)

溝状舌(こうじょうぜつ)は、舌背の表面に多数の溝が見られる状態を言います。別名、皺襞舌(しゅうへきぜつ)とも言います。小児期にはまれで、青年期で増加して症状も顕著になり、老年期でもっとも多く発症します。年齢とともに溝が顕著になる傾向があり、通常自覚症状はありません。

治療の対象とはなりませんが、溝の部分に細菌叢が停滞しやすく、まれに舌炎を併発するため感染予防のための口腔清掃に努めることが必要です。

原因 形成異常の一つで、遺伝的素因によるものと考えられています。
治療方法 口腔内の清掃、痛みがある場合は対症療法(炎症を抑える軟膏やうがい薬の処方)。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)
プラマービンソン症候群
(Plummer-Vinson syndrome)

プラマービンソン症候群は、鉄欠乏性貧血に舌炎(舌乳頭の萎縮による)、匙状爪、嚥下障害(食堂粘膜が萎縮による)を伴うものを示します。

鉄欠乏性貧血の7~19%で認めるとされ、糸状乳頭が消失し、舌背が平坦化、灼熱かん、接触痛を伴うことが多いです。「舌が痛い」と訴えられて来院されることが多く、特徴的な舌の病態の場合、爪の形状を見させていただくことがあります。

原因 胃炎や胃がん手術後による鉄分の吸収障害、偏った食生活、妊婦(妊婦貧血)などによる体内の鉄分不足によって発症。
治療方法 鉄剤の経口投与、対症療法(炎症を抑える軟膏やうがい薬の処方)。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、かかりつけ医への対診、血液検査
Hunter舌炎(Hunter glossitis)

Hunter舌炎は、悪性貧血の粘膜症状として見られる舌炎です。悪性貧血はビタミンB12の吸収不全によって生じる巨赤芽球性貧血であり、約75%は舌に症状が見られます。舌粘膜の糸状乳頭が顕著に萎縮し、舌表面は平滑となります。炎症により赤みを帯び、潰瘍形成すると灼熱痛が出ます。舌以外に頬粘膜、口唇、歯肉にも症状が出ることがあります。

原因 胃炎や胃がん手術後による鉄分の吸収障害、偏った食生活、妊婦(妊婦貧血)などによる体内の鉄分不足によって発症。
治療方法 ビタミンB12の非経口投与、対症療法(炎症を抑える軟膏やうがい薬の処方)。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、かかりつけ医への対診、血液検査

【3-3】唇の粘膜疾患

口唇ヘルペス(口唇疱疹)
(herpes labials)

口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV-1)の感染症によって引き起こされ、唇やその周りに痛みを伴う水疱(みずぶくれ)ができる病気です。初感染は90%が不顕性感染(細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにもかかわらず、感染症状を発症していない状態)で、幼少期であり、その後頭部にある三叉神経という太い神経節に住み着きます。風邪などの免疫力が低下した時に、ウイルスが活発化し最初を繰り返す特徴があります。

成人に多く、口唇、口角部によくでき、ヒリヒリ感や赤く腫れてから2日前後で1.2mm程の小水疱(水ぶくれ)を形成します。2週間内でかさぶたとなり治癒します。

原因 HSV-1の感染による。
治療方法 抗ウイルス軟膏(アシクロビル、ビダラビン、バラシクロビルなど)の患部塗布。この薬はヘルペスの症状が出たら、できるだけ早い段階で飲み始めるのが望ましいとされています。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)
クインケ浮腫(Quincke edema)

クインケ浮腫(Quincke edema)

クインケ浮腫とは、急に皮膚や粘膜が腫れる病気の症状のことであり、発作性、限局性に生じる浮腫性腫脹です。症状は数時間から数日以内で消えますが、再発することがあります。

原因 遺伝子異常によるものに(遺伝性血管性浮腫)HAEがあり、主にC1インヒビター(別名:C1インアクチベーター)という物質の遺伝子異常が原因で起こります。遺伝子異常によらないものは、薬やアレルギーなど、いろいろな原因で起こります。
治療方法 抗ヒスタミン薬、抗プラスミン薬の単独あるいは併用療法。ステロイド薬処方。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、かかりつけ医への対診、血液検査
肉芽種性口唇炎
(cheilitis granulomatosa)

肉芽種口唇炎(にくげしゅせいこうしんえん)は、口唇がび慢性(広範囲に)に腫れ上がる特徴的な変化を示し、組織検査をすると肉芽の形成をみる疾患です。肉芽種性口唇炎に、溝状舌を伴う舌の腫脹、再発性顔面神経麻痺を合併したものをメルカーソンローゼンタル症候群と言います。

始めは数時間から数日で消失しますが、繰り返し起こり、最終的にはゴムのような弾性硬さになります。口唇の腫れが長く続く場合は検診を推奨します。

原因 口腔内慢性病巣感染(歯周病、根尖性歯周炎、扁桃腺炎など)、金属アレルギー(歯科用金属)、食物アレルギー(食物、香料、添加物など)、遺伝的素因の関与(MRS)、クローン病などが示唆されています。
治療方法 歯科治療、ステロイド薬内服処方。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、かかりつけ医への対診、血液検査

【3-4】頬の粘膜疾患

フォルダイス斑(Fordyce’s spots)

フォルダイス斑は、口腔粘膜に生じた異所性脂腺です。頬粘膜に黄色の斑点や顆粒状のブツブツがみられ、隆起はありません。臨床症状はなく、男性では思春期以降に、女性では更年期以降に顕在化します。

原因 不明(口腔形成期に迷入した皮脂腺とされています)。
治療方法 治療の必要なし。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)

【3-5】歯肉の粘膜疾患

急性壊死性潰瘍性歯肉炎
(acute necrotizing ulcerative gingivitis)

急性壊死性潰瘍性歯肉炎(ANUG)は、慢性炎症がある歯間乳頭部や辺縁歯肉から発症する初期病変です。壊死に陥った後、その部位に嫌気性菌が感染して増殖することにより壊死性潰瘍性歯肉口内炎となり、口蓋や口底などの口腔粘膜に拡大します。

病変の変化は急激であり、あっという間に周囲や深部にまで広がり、発熱、リンパ節の腫れ、全身倦怠感が発現します。潰瘍表面は灰白色の偽膜で覆われ、易出血性で痛みも強く、特有の腐敗臭があります。病変が口峡部に及ぶとワンサン口峡炎といわれます。HIVに関連して発症することもまれではありません。

原因 口腔常在菌の混合感染で、紡錘菌やスピロヘータなどが関与します。
治療方法 口腔内清掃、抗菌薬の大量投与、栄養補給。
検査方法 口腔内検査(視診、触診、歯周病検査)、細菌検査
疱疹性歯肉口内炎(ヘルペス性歯肉口内炎)
(herpetic gingivostomatitis)

疱疹性歯肉口内炎(ほうしんせいしにくこうないえん)とは、単純疱疹(ヘルペス)ウイルス(HSV-1)の初感染で起こる歯肉口内炎であり、乳幼児に多くみられ、飛沫または接触感染します。感染しても症状の出ない不顕性感染が90%以上と言われています。感染した疱疹ウイルスは、神経節に住み着き、回帰感染は口唇ヘルペスとして現れます。

初感染後3~7日で発症し、発熱、倦怠感があり、その後に口腔内症状が現れます。歯肉、口唇、舌、口蓋などの粘膜に小水疱を形成しますが、水疱は破れやすく、びらんや潰瘍を形成します。接触痛、刺激痛のため食事が困難となります。

原因 単純疱疹(ヘルペス)ウイルス(HSV-1)の初感染。
治療方法 抗ウイルス薬(アシクロビル、ビダラビン、バラシクロビルなど)の内服および含有軟膏の患部塗布。症状発現の初期ほど有効です。痛みには対症療法、栄養補給。
検査方法 口腔内検査(視診、触診)、血液検査

監修者情報

福島 龍洋

渋谷青山デンタルクリニック
院長 福島 龍洋

近年、口腔がんの罹患率が増えて、死亡者数も増加傾向にあります。その中で、長年口腔外科に従事してきた経験を活かして、大学病院レベルの検査体制を導入しています。数多くの症例を「みたり」「触れて」きたからこそ出来る診療体制を整えています。